酒さは赤ら顔になる病気です。顔の表面の細かい血管が拡張し(チリチリした赤い線)、その周りに炎症が起こることで赤ら顔になり、また毛穴の周りも炎症を起こすとニキビのような赤いポツポツができます。特に鼻、両ほほなど顔の中央付近で目立ち、気温の変化などの影響を受けると赤くなりやすくなります。
ニキビと親戚のような病気で毛穴の炎症によるポツポツが目立つ点は同じです。 ニキビと治療の一部は共通ですが、鼻やほほの赤みが強く、赤みだけではなくほてり感や刺激感で悩まれる酒さ患者さんが多いです。
酒さの治療経験のある皮膚科専門医でないと診断が難しく、誤った診断でステロイド外用などを行われ症状が悪化した患者さんを数多く見かけます。
酒さのタイプ
紅斑毛細血管拡張性酒さ(第I度):顔が一時的に赤くなったり、持続的に赤みがでたり、皮脂が多くなりテカテカしたり毛細血管の拡張が目立ちます。
丘疹膿疱型酒さ(第II度):赤いブツブツ(丘疹)が見られ、膿を持ったブツブツ(膿疱)が目立つ状態です。ニキビと違って毛穴に一致しないブツブツがみられます。
腫瘤型酒さ・鼻瘤(第III度):鼻によく見られる、皮膚が厚くなり皮膚がボコボコと凹凸が目立つ状態になります。重症例は男性に多いです。
その他に眼型もあり、涙目のような目の充血、異物感、熱感、痒み、乾燥、眩しい感じなどが症状としてみられます。
このようにいくつかのタイプにわかれますが、「赤いぽつぽつ」、「ぼわっとした赤み」、「ほてり感」、「チクチクした刺激感」がポイントとなります。
酒さの原因は?
皮膚表面に存在するニキビダニ(Demodex)や皮膚表面の免疫異常が原因と考えられています。日光や加齢により毛細血管拡張は悪化し赤みは増していきますが、酒さを早い段階で発症するケースもあり、遺伝的な要因が大きいといわれています。
血管が開くような刺激によって赤ら顔は悪化します。冬には暖房による外気との寒暖差が大きくなり赤ら顔は悪化します。また暖房による高い室温でほてり感を感じることも多いです。紫外線が強くなる5月頃から赤ら顔が悪化する方もいます。そのほかの悪化する要因としては香辛料の効いた刺激物を食べこと、飲酒、喫煙、高血圧のお薬など血管を拡張させる系統のお薬の内服、精神的ストレス、運動後、入浴後などには顔の赤みが増します。これらの症状が当てはまる方は酒さの可能性がありますので、当院へお気軽にご相談ください。
酒さ(赤ら顔)の治療
酒さの治療では、まず生活習慣の改善、スキンケアの改善が重要です。お薬やIPL(光治療、フォト治療)をする時は、ブツブツ(丘疹)が強いのか、ボワッとした赤み(紅斑)だけなのかがポイントになります。ブツブツが強い場合は飲み薬やぬり薬が効果的です。ボワッとした赤みにはIPL(光治療、フォト治療)が特に効果的です。
生活習慣
精神的ストレスも酒さ悪化の原因となるので、ストレスはためないようにすると良いです。 洗顔の際は刺激にならないよう強く擦らない、洗顔後はタオルをやさしく当てるようにして水分を拭き取るとよいです。香辛料のきいた食べ物、飲酒、喫煙、高い室温、温度差、高血圧のお薬、強い紫外線、運動なども酒さの悪化因子ですので可能な限り避けることが重要です。
スキンケア
酒さでは悪化の原因を避けることやスキンケアがポイントとなります。肌は乾燥しやすくなり、また日光の影響で赤ら顔が悪化します。紫外線に注意し、保湿を年間を通してどのような時期や天候でも行うようにすると良いです。
洗顔についても、冷たい水や熱いお湯での洗顔はやめましょう。
紫外線の影響をさけるために毎日、日焼け止めをしっかり塗りましょう。日焼け止めは紫外線散乱剤のみで紫外線吸収剤が入っていないもの(ノンケミカル)が皮膚に優しいため酒さの方にはおすすめです。しかしながら、ノンケミカルの商品では紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化亜鉛)により白浮きしやすいです。日常生活であればSPFは30で十分で、SPFが高いものを選ぶより2~3時間ごとに塗り直すことで効果を高めることができます。
保湿剤は、皮膚の保護効果もあるため使用をおすすめしています。また酒さのぬり薬の刺激も保湿剤を併用することで軽減できるメリットもあります。
なお、血管を広げるタイプの保湿剤(ヒルドイド、ヘパリン類似物質)は酒さの症状を悪化させるので使用は推奨できません。
メトロニダゾール(ロゼックスゲル)
メトロニダゾールは比較的刺激性が少ないので、酒さの治療薬として最初に使いやすいお薬であり、酒さ治療で保険適応がありますので当院でも最初に使うことが多いです。酒さの患者さんの皮膚では過剰な炎症をおこしておりますが、メトロニダゾールは抗炎症作用・免疫抑制作用・活性酸素の軽減や不活性化の作用を通して治療効果を発揮すると考えられます。
アゼライン酸(AZAクリアなど)
当院ではロート製薬から医療機関専売品として発売されている、20%アゼライン酸配合クリーム「AZAクリア」を取り扱っております。アゼライン酸は殺菌効果、抗炎症効果、抗酸化作用があり酒さ治療で使うことがあります。小麦やライ麦などの天然の穀物由来の成分で妊娠中・授乳中にも使えるお薬です。使い始めの1週間ほどにピリピリと刺激を感じてしまう方もいますが、外用を続けていると次第に慣れていきます。外用後の乾燥もありません。
抗生物質の内服(ビブラマイシン、ミノマイシン、ルリッド)
これらの抗生物質は殺菌効果のみではなく、抗炎症効果がありますので酒さ治療の場合は抗炎症効果を期待して内服を行います。抗炎症効果によりブツブツや赤みを抑えることができます。ビブラマイシンは胃のムカツキ感が出る方もいますが比較的副作用が少なく使いやすいです。ミノマイシンは目まいやフラツキが出る方が比較的多いので、当院では副作用と治療効果のバランスからまずはビブラマイシンを内服していただく事が多いです。
IPL(フォト治療、光治療)
IPLはskin rejuvenation(皮膚の若返り)治療やシミ治療の代表的な治療機器として知られています。近年、IPLによる酒さの改善効果が報告されています。メトロニダゾールゲル(ロゼックスゲル)がブツブツなどの炎症性皮疹には有効性が示されていますが、いわゆる「赤ら顔」とよばれる毛細血管が拡張している紅斑毛細血管拡張型酒さの治療には効果が乏しいと言われています。そのような症例にはIPLが有効です。症状の程度により異なりますが、3~5回程度の照射で紅斑・ほてりの改善など効果を実感することが多いです。
当院では生活習慣の指導とスキンケアを中心として、患者さんの症状にあわせて外用薬や内服薬そしてIPLを組み合わせて酒さの治療を行っていきます。
酒さでお悩みの方は当院へご相談ください。