男性の脱毛症の中で最も多いのが男性型脱毛症（AGA : Androgenetic Alopecia）です。AGAと略されてご存じの方も多いと思います。AGAは日本人男性の約30％にみられ、思春期以降、特に20歳代後半から30歳代にかけて著明となり、徐々に進行して40歳代以後に脱毛の症状がピークとなります。
症状は前頭部と頭頂部の頭髪が細く短くなり、しだいに額の生え際が後退し頭頂部の頭髪が減っていきます。頭髪の毛周期の成長期が短くなるために、太く長かった毛が細く短くなる軟毛化が起こります。
軟毛化の原因は男性ホルモンが毛乳頭に働いて毛周期が変化すると考えられています。前額部や頭頂部の毛包は男性ホルモンに反応しやすいので、軟毛化が生じやすいです。一方でヒゲや胸毛の毛包に男性ホルモンが作用すると軟毛から硬毛に変化することが知られています。また、後頭部の毛髪や眉毛には男性ホルモンは影響していないといわれています。
AGAの診断方法
AGAの診断は皮膚科専門医が問診による家族歴、脱毛の経過を聴き、視診により額の生え際が後退し前頭部と頭頂部の毛髪が細く短くなっていることを確認します。トリコスコピー（拡大鏡）を使って毛の太さの不均一性などAGAの所見を確認して、総合的に判断し診断します。
AGAの治療
AGAは進行すると治療しても治りにくいことが知られています。症状が出始めたら、早めに治療した方が治療効果が上がります。男性ホルモンの働きを抑える飲み薬を中心に、ミノキシジルという発毛効果のある成分の塗り薬を組み合わせて治療を行います。もちろん、飲み薬は使わずに外用薬のみの治療も可能です。
（※）AGA治療は内服薬、外用薬ともに自由診療となります。
ミノキシジルの塗り薬
ミノキシジルの塗り薬は市販薬として販売されています。日本ではリアップ、リザレック、リグロといった名前の商品でドラッグストアや薬局で購入することができます。髪の成長をうながすこと、髪への血流を増やすことで効果を発揮します。塗り方は朝と夜に1日2回塗る必要があります。効果がでるのに少なくとも4ヶ月程度はかかりますので、最低この期間は塗り続けることが重要です。ミノキシジルに限らず男性型脱毛の薬は使用をやめると治療効果がなくなり元の状態に戻ってしまいますので、治療効果が出た際には使用を継続する必要があります。塗り薬ですので、重篤な副作用はほとんどなく、血圧や心臓に大きな問題のある方でなければ、問題なく長期間使えます。局所的な副作用としてはかぶれるリスクがあります。
なお、ミノキシジル外用薬は女性用の製品も発売されていて、特に更年期以降に髪の毛が全体的に薄くなる女性型脱毛に効果的です。
フィナステリド、デュタステリド
・フィナステリド（プロペシア）は5α-還元酵素というテストステロンを強力な男性ホルモンであるジヒドロテストステロンに変える酵素の働きを抑えることで効果を発揮します。フィナステリドは頭皮の組織中、血中のジヒドロテストステロンの量を約60-70%減少させるとされています。治療期間は少なくとも6ヶ月間は続けると良いです。内服をやめると元の状態に戻ってしまうので、治療効果が出てきた場合には飲み続けることが重要です。
・デュタステリド（ザガーロ）はフィナステリドと同系統の飲み薬となりますが、フィナステリドは2型5α還元酵素のみに作用するところ、デュタステリドは1型5α還元酵素と2型5α還元酵素の両方を抑えることにより強力に治療効果を発揮します。つまり男性ホルモンの毛髪への作用をフィナステリドより強力に抑えます。そのため、フィナステリドよりも高い治療効果が期待できます。
・フィナステリド（プロペシア）、ザガーロ（デュタステリド）のいずれもまれな副作用としては肝臓への負担、性欲減退（リビドー低下）、勃起障害、乳腺のふくらみ等が報告されていますが頻度は低く、比較的安全に使用できます。なお、両薬剤とも前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA値が低下するため、健診や人間ドックを受ける際などでPSA値を測定する場合には注意が必要です（前立腺がんに罹患しやすくなるわけではありません）。
・塗り薬、飲み薬ともに治療薬の選択は、患者さん一人一人の状態や背景、さらに副作用への対応など、さまざまな要素を考慮して行うので、皮膚科専門医のもとで治療を進めることが大切です。
◎皮膚科専門医ではないドクターにより円形脱毛症をAGAと誤診断され治療を行われているケースがしばしばあります。脱毛を生じる病気はたくさんあります。診断が異なると治療効果はあがりませんので、脱毛症の治療経験が豊富な皮膚科専門医のクリニックへの受診をオススメします。加賀いけだ皮膚科では皮膚科専門医である男性院長が治療を行います。
