繰り返しできるニキビや、市販薬を使っても治らないニキビにお悩みではありませんか。ニキビがあることによって、そのことばかりが気になってしまって、気持ちまでもが暗くなって楽しく過ごせなくなったりしていませんか。周囲には気にしなくていいよと言われても、ご本人にとっては非常に大きな悩みかと思います。
ニキビは慢性的な炎症性疾患です。治療は数日では難しく、目に見える効果が出てくるのに短くても2週間ほどはかかります。毎日続けることで確実にニキビの数は減りますので、一緒にニキビ治療を頑張りましょう。ニキビ治療で大事なことは『適切な処方薬を使うこと』と『根気よく治療を続けること』です。当院では外用薬の塗り方のコツ、スキンケアから生活指導までお伝えしていきたいと思っています。
ニキビといえば思春期に出るイメージだと思いますが、大人になってから出る方も多いです。ニキビが肌に残っていると、将来的にニキビ跡ができてしまうかもしれません。ニキビ治療の最大の目標はニキビ跡を残さないことです。ニキビができたら、小さな段階で腫れてしまう前に早めに当院へご相談ください。
ニキビとは
毛穴の中には皮脂を分泌する脂腺がありますが、一部の毛穴は脂腺が発達していて脂腺性毛包と呼ばれます。脂腺性毛包は毛穴の中が広いため、角質や皮脂が詰まりやすくなっています。
ニキビは形成過程の段階によって色々な種類があります。ニキビの種類によって治療薬が変わってきます。また、ニキビは様々な種類が同時に混じることが多いです。
【ニキビの種類】
微小面皰(マイクロコメド):毛穴の出口がつまり始めている状態で、目に見えない顕微鏡レベルの小さなニキビの赤ちゃん
白ニキビ(閉鎖面ぽう):角質や皮脂で毛穴が詰まった状態
黒ニキビ(開放面ぽう):白ニキビの毛穴が開き、酸化された皮脂により黒く見える状態
赤ニキビ:皮脂や角質が詰まっている状態ではニキビ菌が増えやすく、ニキビ菌が増えて炎症を起こしてしまった状態
黄色ニキビ:炎症が更に強くなり膿がみえるようになった状態
炎症が毛包を超えて周囲におよんで皮膚を破壊して、 毛穴の壁がもとに戻れなくなりニキビ跡につながります。
原因
ニキビの原因は大きく3つあります。
1. 男性ホルモンの作用で脂腺が増殖し、皮脂の分泌が過剰になる。皮脂が毛穴を塞いだり、皮脂自体が刺激となって炎症を起こす
2. 毛穴の角質が異常に増殖して毛穴が詰まる
3. ニキビ菌(アクネ菌)が毛穴で増殖して炎症を起こす
思春期にニキビが増えるのは、男性ホルモンの影響で皮脂の分泌が増えることによります。生理前に顎やフェイスラインのニキビが悪化するのもホルモンの影響とされています。
治療
ニキビ治療に使える市販薬は、診察を受けずにドラッグストアや薬局などで誰でも気軽に購入できます。そのため、あらゆる年齢や体格の人であっても安全に使えるように、一般的に処方薬よりも有効成分の含有量が少ないことが多いです。しかし処方薬は、医師が症状や年齢などにあわせて投与量や種類などをその都度見極めて処方します。そのため処方薬を利用すると、一人ひとりの肌状態や症状にあわせた治療を受けることが可能です。市販薬を使用しても改善しないときには、悩まずに当院を受診して処方薬による治療を受けると良いでしょう。
ニキビの治療の方法としては大きく3つあります。
1. ニキビ菌を減らす
ベピオ、抗生剤の飲み薬や塗り薬には殺菌効果があります。
2. つまりやすい毛穴出口を広げる
毛穴出口の角質つまりに対して、角質をはがしていくことで改善していく治療 (ベピオやサリチル酸ピーリングなど)と毛穴出口の角質を作る作用を抑える治療(ディフェリン)があります。
3. 皮脂を抑える
ビタミンB2やB6の飲み薬などがあります。
ニキビの治療で注意すべきことは、治療の効果をみるのに時間がかかってしまうことです。 他院で処方された薬剤を数日使って効果がなく、塗り薬は刺激症状などが強いと感じてやめてしまう患者様を多くみてきました。 毎日しっかりと外用して効果がでてくるのは少なくとも2週間はかかりますし1か月程度かかることも多いです。処方のニキビのお薬は効果が高い分、刺激感や乾燥といった副作用が比較的よく出てくるため、慣れているドクターでないと少し使い方が難しいです。実際、他院で外用薬を説明なく処方され不適切な塗り方をしていたり、本当は塗り方を一工夫すればしっかり継続できるのに副作用で使えなくなっている患者さんを非常に多く見かけます。当院ではしっかりと治療効果をだしつつ、副作用を可能な限り抑えられるように塗り方の指導を含めて治療の説明を行っていきますのでお気軽にご相談ください。
保険適応で処方できるニキビの塗り薬は大きく分けて3つあります。
それぞれ異なった機序でニキビに効きます。
<抗菌薬:ダラシン、アクアチム、ゼビアックス>
ニキビ菌を改善
<アダパレン:ディフェリン>
ビタミンA類似の作用、毛穴出口の角質を作る作用を抑える
<酸化ベンゾイル:ベピオ>
毛穴出口の角質詰まりに対して角質をはがす、抗生剤と異なる機序でニキビ菌を改善
どの薬がよく効くかは一人ひとりで異なるため、効果を見ながら処方する薬剤を調整していきます。
あらかじめ混合した薬剤もあります。
デュアック:ベピオ+ダラシン
エピデュオ:ベピオ+ディフェリン
デュアックやエピデュオなど2つ以上の塗り薬を混ぜたものは効果が高く、1日1回ぬれば良いので毎日使いやすいのが特徴です。
<抗菌薬:ダラシン、アクアチム、ゼビアックス>
抗生剤のぬり薬は、アクネ菌を殺菌することでニキビに効果を発揮します。 抗生剤のぬり薬の使いやすい点は、ベピオやディフェリンのような赤くなる・かさかさするなどの刺激症状がないことです。 その点でとても使いやすいです。
赤ニキビや黄色ニキビには効果がありますが、白ニキビや黒ニキビには効果が少ないので注意が必要です。 また抗生剤ですので、長期に使用するとお薬が効きにくい耐性菌を作ってしまうことがあります。 ですので、耐性菌ができにくいように適切に使用することが重要です。
「ダラシン(クリンダマイシン)」は長い間世界的に使われている抗生剤のぬり薬で、ゲルとローションの2タイプがあります。 「ゼビアックス」と「アクアチム(ナジフロキサシン)」という抗生剤も保険適応で処方できます。 ローションや軟膏など様々なタイプがあり症状や場所によって使い分けます。
<アダパレン:ディフェリン>
ディフェリンの主成分であるアダパレンはレチノイドというビタミンA誘導体に似た成分の薬です。
毛穴の角質の異常な角化を抑えることで角質による毛穴の詰まりを改善してニキビを治します。イメージとしては、毛穴が閉じない肌質にゆっくり変えていく感じになります。主に白ニキビに効果を示しますが、抗菌薬の塗り薬と一緒に使うことで赤ニキビの治りを良くすることもわかっています。即効性はないですがニキビに対する効果は高く、2週間ほど使うと効果を実感し始め、4~8週間使うとかなりの効果を実感できます。 寝る前に一度、洗顔後に塗ります。
副作用としては使い始めたころの刺激感があります。個人差はありますが多くの人が経験し、塗り始めの段階で赤みや皮むけ、ひりひり感が出現します。2週間程継続して塗っていると刺激感はおさまることが多いので、症状が強くなければ頑張って継続することをお勧めします。この使用開始直後の2週間を乗り切れるかどうかがポイントになると考えています。
最初に目立たない一部の部位(おでこなど)に塗って刺激感を確認し、刺激感が強い場合は最初は薄めに塗ったり、2~3日に1回の外用から始めてみるなどちょっとした工夫をすることで高頻度に起こる副作用を乗り越えることが可能となります。一度にたくさん使うよりも、少しずつでも良いので継続することが大切です。ビタミンA誘導体の薬と同様に、妊娠中、授乳中は使えないことは注意点です。長期に使っても安全で、一度慣れてしまえば使いやすく、ニキビ予防になる優れたお薬です。皮膚のターンオーバーを改善しますので、メラニンを皮膚の外に出す作用があり、ニキビあとの色素沈着にもある程度、効果が期待できます。なお、妊娠中には使えないお薬となっています。
<酸化ベンゾイル:ベピオ)>
ベピオの主成分である過酸化ベンゾイルは、活性酸素の作用で抗菌効果に加えて詰まった角質を剥がすピーリングの効果を発揮します。赤ニキビから毛穴の詰まりまで幅広く効果を期待できる薬です。この薬は冷所保存が必要です。
アダパレンほどではないのですが、使い始めた頃にピーリングの効果で赤くなる、皮むけがでるといった刺激症状が出ることがあります。その際もアダパレンのように最初に目立たない一部の部位(おでこなど)に塗って刺激感を確認し、刺激感が強い場合は最初は薄めに塗ったり、2~3日に1回の外用から始めてみるなど外用方法を工夫すると慣れてきます。
赤いブツブツした赤ニキビには比較的即効性があります。 アダパレンと同じでニキビの予防効果もありますので、赤ニキビがよくなった後も継続して使用することが望ましいです。
また最初からでなく、使っていてしばらくしたところで急にかゆみや赤み、場合によってはかぶれのジクジクがでてしまう方もいます。 そのような症状が出た場合は継続が難しい場合も多く、使用を中止し早めにご相談ください。
以前はベピオはゲル製剤(ベピオゲル)しかありませんでしたが、2023年5月よりベピオローションが発売されました。こちらは、ベピオゲルより刺激が少なく、保湿効果もあるため肌に優しい塗り薬となっています。ベピオゲルで刺激症状が出てしまった方でもベピオローションは使えることも多いのでニキビ治療の第一選択と考えています。
<デュアック:ベピオ+ダラシン>
ベピオとダラシンを一緒に混ぜた「デュアック」という処方薬もあります。 ベピオにプラスして抗生剤のダラシンが配合されており、即効性が高いです。1日1回塗るお薬で寝る前などに使用します。 抗生剤が含まれている分、長期使用すると耐性菌ができてしまう可能性があり漫然と外用し続けることはすすめられません。デュアックで治療をはじめて、よくなったところでベピオに変更することも多くあります。 デュアックも1日1回洗顔後に塗るお薬となります。
<エピデュオ:ベピオ+ディフェリン>
保険診療の処方薬では一番効果が高いお薬です。 ディフェリンとベピオが混ざっているお薬です。 抗菌効果、ピーリング効果、毛穴をつまりにくく肌質を変えていく効果がありとても効果が高いと考えます。 しかしながらその分、赤み・かさかさなどの副作用が最も強くでるので注意が必要です。 副作用がでなければ、抗生剤を含まないので長期的な使用ができるのも良い点です。
<アゼライン酸:保険適応外の治療薬>
海外では一般的に使われているニキビや酒さの治療薬ですが、日本では保険適応外の治療となります。 このため、当院ではまずはベピオやディフェリンなどの保険適応のお薬を使って治療を開始します。
アゼライン酸は小麦やライ麦などの麦類や酵母に含まれている天然由来成分です。 海外ではお薬になりますが、日本ではロート製薬より医療機関専売品として20%アゼライン酸配合クリーム(AZAクリア)として販売されており化粧品の扱いであり当院でも取り扱っております。 海外のニキビの治療ガイドラインでは必ず登場するような重要なお薬です。 効果としては、角化を正常化することにより毛穴つまりを解消する、抗菌作用、5αリダクターゼを阻害する事によって皮脂の分泌を抑える、抗炎症作用、 チロシナーゼ活性阻害でメラニンの作用を抑える(美白作用)があります。様々な作用機序でニキビ治療に用いられます。刺激は比較的少ないですが、「酸」であり刺激を感じる方もいます。 ベピオやディフェリンが刺激感やかぶれなどで使えない場合に使用を検討します。またベピオやディフェリンに追加で塗るといった使い方も可能です。1日1回の使用から開始し刺激感などを確認しつつ、問題なければ1日2回の外用に増やします。アゼライン酸は妊婦中や授乳中の方にも使用可能です。
このようにニキビのぬり薬は多数あり、薬の特徴を理解し症状や場所によってうまく使いこなすことがポイントになります。 当院では、これらぬり薬を症状や患者さんの気持ちを考慮しつつ治療していますのでニキビでお悩みの方はお気軽にご相談ください。
<抗菌薬内服:ビブラマイシン、ミノマイシン、ルリッド>
当院では炎症を起こした赤ニキビが多いときには抗生剤の飲み薬も使います。ぬり薬だけでよくならない時は、飲み薬も一緒に使うと赤ニキビや黄色ニキビが消えやすくなります。 ニキビ菌を殺菌するだけでなく、ニキビの炎症自体も抑える効果を期待して飲み薬が主に使われます。 長期に漫然と使用すると耐性菌が問題になってきますので、できれば8週間、 長くても3ヶ月までにすることが日本や海外のガイドラインでおすすめされています。主にビブラマイシン、ミノマイシン、ルリッドを処方します。 効果と副作用のバランスからビブラマイシンを処方することが多く、日本のニキビの治療ガイドラインでも推奨度が高くなっています。